私も40歳を越え、職業柄身につけるものには気を配っています。たった一つのコーディネートミスが全体の雰囲気を崩してしまうのは、年齢によるところも大きいのです。私はショップで買い物をするときも、価格や製造している国など必ずチェックした上で、自分の身の丈に合うものか吟味してから購入を決めます。あまりに安っぽいものでは、足元を見られますし、過度に高級なものは着用した際に違和感が生まれます。40歳から50歳くらいまでは、洋服選びやコーディネートについて難しい時期といえます。
冬のコーディネートに欠かせないウールのニットは、皆さんクローゼットに一着はあるはずです。毎年の光景で、冬はニットも一つくらいは欲しいなとショップに行って、店員の方に"これなら間違いないですよ"と言われて納得して購入したつもりが、いざ家に帰ってクローゼットを開けてみると、ニットの山の中には、ブラック、ブラウン、ベージュ、ホワイト、ネイビー…あれ、地味な色しかない!そして、今日買ってきたニットは地味なグレーでした。そんなことってありませんか?ニットは、冬しか着ないから着回しが効く地味な色がどうしても増えてしまいがちです。店員の方も、あなたのクローゼットの中身までは分かりませんし、お店の事情としてどうしても冬のハイシーズンやセール時期には、おとなしいカラーのニットの在庫ばかりになってしまう為、おすすめする側も、地味で一見使えそうなカラーのニットを提案してしまいがちなのです。お客様の立場としても、"冬のニットは着る時期が短いから少しでも合わせやすい色が欲しい"、"派手なカラーや柄も気になるけど着こなす自信がない"といった理由からカラフルなニットは避けられる傾向が強いのです。すると、クローゼットの中が地味で変わり映えしなくなり、おしゃれをしようという意欲が奪われてしまいます。今回は、パスされがちなカラフルニットの着こなしのポイントを含めて一着は持つべき理由をお話ししていきます。
1)気分が明るくなり、周りを元気にする
北欧では、長い冬の間に太陽が姿を見せない時期が長時間あります。夜が長く、昼が短い環境は人間の心にまで影響を与えてしまいます。そんな北欧では、ショッキングピンクやオレンジ色など、太陽の代わりに心を元気にしてくれるカラーが一般生活に根付いています。北欧ほどではありませんが、日本でも冬は、曇り空や木枯らし、寒風に代表されるように気持ちを憂鬱にさせるシーズンであるといえます。そんな季節に、黒やグレーばかりで冬の毎日過ごしていれば気分が上がるはずもありません。色の与えるメンタル的効果は、例えば赤には感情を昂らせたり、オレンジには陽気で楽天的な印象を与えたり、黄色には前向き、希望といったイメージを与える、といった見る人にも、着用する人にもポジティブな効果を与えることが心理学的にも実証されています。落ち込んでしまいがちな冬のシーズンにカラフルなニットを着用することは理に叶っているという訳です。
2)アウターの魅力を引き出す隠し味
冬の洋服として代表的なものは、防寒具としてのアウターも欠かせない存在です。そこで、家のクローゼットをもう一度確認してみて下さい。ダウンジャケット、コート、ブルゾン…、いろいろなアイテムはありますがカラーはいかがでしょう。黒、チャコールグレー、ネイビー、またまた地味な色のオンパレードです。当然といえば、当然ですがアウターはニット以上に価格も張るもので、色での冒険ができないアイテムと言えます。では、合わせやすいと言われる黒やベージュ、グレーのニット達と手持ちのアウターでコーディネートしてみましょう。予想通り、地味な組み合わせばかりが出来上がってしまうはずです。例えばショッキングピンクやオレンジのニットが入れば全く印象が変わってきます。ネイビーのコートに赤いニット、チャコールグレーにイエローのニットなど、チラリとそのカラーが見えるだけでも全体の印象がグッと変わります。冬の街を行き交う人を見渡せばグレーや黒やネイビーといったお決まりのカラーのコートを着た人を必ず見つけることができます。同じようなコートばかりの中では、選ぶインナーのニットの違いで、何気ないコートはもちろん、その人自体も素敵に際立って見えるはずです。
3)不必要な買い物が減る
"冬に着るものがないから、ボーナスでまとめていろいろと買わなくちゃ"とか、"せっかくのセールだから、何か買っておかないと損をしたような気がする"とお考えの方は、まずはカラフルなニットを一枚買ってみることをおすすめします。カラフルなニットをコーディネートに加えることによって、今までクローゼットにはあったけど出番がなかったアウターやパンツ、シャツなどの手持ちの洋服の魅力が一気に引き出されます。ネイビーのコートに赤いニット、チャコールグレーのジャケットにイエローのニット、ベージュのチノパンにオレンジ、カーキのパンツにピンクを入れたりなど、チラリとそのカラーが見えるだけでも全体の印象がグッと変わり、今まで購入してきた洋服達がきっと生き返ります。シーズンごとに一から洋服を揃え直したり、セールで不要なものまで購入してしまったりして散財するよりも、シーズンのスタートとともに、クローゼットにないカラフルニットを一枚購入しておけば長い目で見れば節約につながるという訳です。
まとめ
上質なカラフルニットは、そもそも市場に出回る量が限られています。私のバイヤー経験としては一店舗にブラックを20枚仕入れたとしたら、カラフルなニットの数量は多くても4~5枚が妥当なところでしょう。一般的には、売れ筋と言われるカラー、つまり店の売上の中心になるのは、ブラックやグレーやネイビーといった着回しが効くカラーです。店の売り上げ規模に比例しますが、仕入れることができる量には限界がある為、カラフルなニットはアイキャッチ、客寄せ用として最低限の量しか仕入れません。そうすると、必然的にカラフルなニットが市場には少量しか流通しないことになります。しかも、多くのセレクトショップには必ず上顧客様が存在していて、常に新作の動向をチェックしています。販売員も、今まで通りの商品を提案していては顧客の方に満足してもらえないので、目を引く色から次々と販売員がおすすめし、顧客の方があらかた購入して売り場は地味な色だけになってしまうのです。このように、ブランドのついた上質なカラフルニットは探していても見つからないことが多いのです。それでは、どのようにして手に入れるのかということになります。ズバリ、店やネットで見かけて気になったタイミングで購入する、いわば次はないという一期一会の考え方での購入をおすすめします。ニットの新作が並び始めるのは、9月末から10月にかけてとなります。当然すぐにニットが着れるような気候ではないので、大抵の方は躊躇します。そこが狙い目であると言えるでしょう。早く買えば、着たいタイミングですぐに着ることが可能です。着たくなってから探していては手遅れとなります。ここまでご紹介したように、カラフルニットには多くの可能性があります。挑戦してみたい方は是非早めの購入を検討してみてはいかがでしょうか。
Add to favorites